中東でのイランと米国の緊張

今回の米軍によるイラン革命防衛隊司令官の殺害(1月3日)により、大戦争へ拡大するのではという報道が多かった。もちろん今後どうなるか分からないが、今のところ米国もイランも戦争は避けたいという意思を明確に出している。

今回のこのイラン革命防衛隊司令官の殺害は、あらかじめイラン側と米国側で情報のやり取りがあったのではないかと、勝手な想像をしている。もちろんイラン側や米国側といっても一枚岩ではないはずで、どの勢力かと表現する必要があるとは思うが。

米軍がどうやって、イラン革命防衛隊司令官の居場所を突き止めたのか?あらかじめ分かっていないと攻撃できないことである。また、殺害後、1月6日に米軍が間違ってイラク軍宛てに米軍撤退の準備を進めているという書簡を送ったと報道されている。米国側は、撤退の決定は一切されておらず、米軍は撤退しないと繰り返しているということである。[1] また、1月8日のイランによるイラクにある米軍基地攻撃も、事前にイランからイラクに通達されていたという報道が流れている。イラクから米軍に連絡されており、それ故に死傷者が出なかったということであろう。トランプ大統領は、米国は戦争をする気はないこと、しかしイランに対して制裁を強化すること、また、NATOにこの地域に対する関与をさらに強化するようにと訴えている。イランも戦争をする気がないことを明確にしている。また、米軍のイラクからの撤退を要求している。

米国もイランも戦争する気がないことは明確であり、トランプ大統領は以前から米軍の中東からの撤退を希望していたはず。しかし、米軍の中東からの撤退には米国の政治家の中からも反対の声があったと思う。イランは米軍のイラクからの撤退を以前から要求していたはずである。こう考えると、両者の希望は一致している。ただ、なぜこの時期にこのような危険な行動を取ったのか?下手をすればイランの国民感情がおさまらず、米軍や米国さらにはその同盟国への復習へと発展していくであろうし、その可能性はまだまだ残されている。

イラン国内の不安定化にもしかしたらその要因があるのではないだろうか。イラン国民の政治に対する不満は大きくなっているという。それはイラクも同様であるが。イラン国民のどれだけが革命防衛隊を支持しているのか。神権政治国家を良しとしない国民がもしかしたら増えているのではないだろうか。そういったイラン国内の問題と今回の革命防衛隊司令官殺害が結びついているとしたら、イランで大きな国内政治の改革が間近に迫っているのかもしれない。

[1] BBC:米軍、イラク撤退示唆の書簡を「誤って」送付、イラク陸軍宛てに,
2020年1月7日. https://www.bbc.com/japanese/51015811